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健康診断で「γ-GTPだけ高い」と言われた方へ:肝臓専門医が解説

健康診断の結果を見て、「γ-GTPが高い」と指摘され、不安に思った方も多いのではないでしょうか。特に「他の肝機能は正常なのに、なぜγ-GTPだけ?」と疑問に感じる方も少なくありません。この記事では、**γ-GTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ)**の役割や上昇の原因、どのような対策が必要か、肝臓内科の専門医の視点から分かりやすくご説明します。

γ-GTPは、肝臓をはじめとする複数の臓器(腎臓、膵臓、小腸など)に存在する酵素で、特に胆道系と呼ばれる肝臓で産生される胆汁の通り道に多く分布しています。血液検査では、主に肝臓・胆道系の状態を反映します。正常値は検査機関によって異なりますが、男性で50IU/L以下、女性で30IU/L以下が一般的な基準です。

結論から言えば、γ-GTPの上昇=肝機能障害とは限りません。特に他の肝機能(AST、ALT、ALP、ビリルビンなど)が正常であれば、急を要する病気の可能性は低いです。それでもγ-GTPが高値であることは、身体のどこかで変化が起きているサインでもあります。原因を見極め、適切に対応することが大切です。

1. アルコールの影響

最も頻度が高い原因がこれです。γ-GTPはアルコールに対して非常に敏感で、飲酒量が多いと反応して上昇します。

  • 毎日飲む習慣がある
  • 1回あたりの飲酒量が多い
  • 休肝日がない(お酒を飲まない日がない)
  • 特にビール500ml以上、日本酒1合以上を毎日飲む人は要注意です。

γ-GTPは「肝臓がアルコールによる負担を受けている」サインであり、肝障害の初期段階を示すマーカーとも言えます。

2. 脂肪肝(非アルコール性を含む)

近年増えているのが、肥満や糖尿病、メタボに関連する**非アルコール性脂肪肝(MAFLD)**です。この場合も、γ-GTPが先行して上昇することがあります。

  • BMIが25以上
  • 中性脂肪やLDLコレステロールが高い
  • 血糖値やHbA1cが高め

といった方は、画像検査(腹部エコーなど)で脂肪肝の確認をすることが重要です。

3. 薬剤性の影響

常用している薬やサプリメントの中には、肝臓に負担をかけるものがあります。

  • ステロイドや抗うつ薬
  • 抗生物質
  • 各種漢方薬
  • 抗てんかん薬、抗不整脈薬
  • 健康食品やサプリ(特に脂肪燃焼系・肝機能改善をうたうもの)

薬やサプリは、たとえ「天然成分」でも肝臓に負荷をかけることがあります。また主成分だけでなく添加物も肝臓に影響を与えます。飲んでいるものを主治医に伝えましょう。

4. 喫煙

喫煙もまた、γ-GTPを上昇させる因子です。特に多量喫煙者では、γ-GTPが高めに出る傾向があります。禁煙することで改善が見られる場合もあります。

5. 胆管閉塞性疾患の初期兆候

胆石や膵疾患(慢性膵炎、膵頭部腫瘍など)によって、胆道が圧迫された場合にもγ-GTPが上昇します。ただしこの場合は、ALPやビリルビンも徐々に上昇してくるため、γ-GTP単独での異常では終わらないことが多いです。まずは腹部超音波で胆管閉塞の画像的な兆候があるか調べる必要があります。

以下に当てはまるものがないか見直してみてください:

・最近、お酒の量が増えていないか?→断酒を目指しましょう。
・肥満やメタボ傾向はないか?→食事・運動療法が大切です。
・常用している薬やサプリはないか?→不必要なサプリなどは一旦中止を。
・喫煙習慣はあるか?→禁煙を目指してみましょう。
・他の血液検査(中性脂肪、血糖など)に異常はないか?

  • 腹部エコー(超音波検査):脂肪肝や胆石の有無を確認
  • 血液検査の追加項目:脂質、血糖、HbA1c、ウイルスマーカー(HBV、HCV)など
  • 肝線維化マーカー(必要に応じて):FIB-4 indexなどで進行の評価
  • 生活習慣の詳細確認:飲酒量、食事内容、運動状況など

γ-GTPが高いと言われた場合、まずは生活習慣を見直すことが第一です

1. 飲酒を控える(減酒または禁酒)

  • 1〜2週間の禁酒でγ-GTPが下がれば、アルコール由来の可能性が高いです。
  • 「休肝日を週2日設ける」ことも有効です。
  • 最低でもアルコールは1日1合(アルコール20g;ビール500ml)までにしましょう。

2. 食生活の見直し

  • 脂肪分や糖質を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。
  • 食事の時間帯(特に深夜の食事)にも注意を。
  • 間食(おやつなど)は控えましょう。不必要なカロリーや糖質、脂質を摂ることになります。

3. 適度な運動

  • ウォーキングや軽いジョギングを週に3回以上。有酸素運動として150分/週以上が推奨されています。
  • 体重の5%程度の減量でもγ-GTPは改善することがあります。

4. 禁煙

喫煙は肝機能に悪影響を与えるだけでなく、他の生活習慣病のリスクも高めます。喫煙は百害あって一利なしです。

以下のような場合には、早めに肝臓専門医や消化器病専門医を受診しましょう。

  • γ-GTPが100IU/L以上
  • 数ヶ月以上、γ-GTPの高値が持続している
  • 他の検査(中性脂肪、血糖値など)にも異常がある
  • 胃のあたりの不快感、倦怠感、黄疸(白目が黄色くなる)などの症状がある

γ-GTPは、肝臓という臓器の「生活習慣に対するセンシティブなセンサー」と言えます。単独の上昇であっても、生活スタイルの乱れを映し出していることが多く、放置すべきではありません。早めの生活改善と、必要に応じた検査・治療を行うことで、肝臓の健康は取り戻せます。定期的な健診で、自分の身体ときちんと向き合っていきましょう。気になる点があれば、気軽に専門医に相談することが大切です。健診結果は「怖がるもの」ではなく、「生活を見直すチャンス」と捉えましょう。

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