胃アニサキス症:生の魚は気をつけろ!?
Scrollアニサキスとは主に魚介類に寄生する寄生虫です。問題となるのはその幼虫です。サイズは長さ2〜3cm、幅は0.5~1mmの白くて細いミミズ様です。アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。アニサキス幼虫は魚介類の内臓に寄生しておりますが、水揚げし、冷凍を経ずに生のまま流通する間に魚の身(筋肉)に移動します。その魚の身を食べることで人間の体内に入り込みます。アニサキス幼虫が胃に入り、胃壁を噛むことで症状が出現します。(実は私も経験があります@築地)
胃アニサキス症は食品衛生法により診断した医師は届出が必要なため、全国的に食中毒の統計として集計されております。京都大学の医療統計学の授業で都道府県別のデータを調べましたが、人口の多い首都圏などでは患者さんが多いのですが、宮崎県など一部地方にも多く、偏りが多い結果でした。ただし、報告数が少ないため偏りが生じた可能性があります。
胃アニサキス症の症状
胃アニサキス症の症状は心窩部(みぞおち)の激しい痛みと悪心、嘔吐です。一般的に生魚の摂取後数時間から半日程度で症状が出現します。
胃アニサキス症の検査方法
腹部超音波
胃腹痛の精査で腹部超音波を行うと胃壁が肥厚して観察される場合がありますが、胃は観察条件によっては観察できないこともあります。しかし原則的に腹部超音波は腹痛の診断に非常に有用な検査です。
胃内視鏡検査
胃アニサキス症では診断だけでなく治療としても有用な検査が胃内視鏡検査です。アニサキス虫体を発見した場合は鉗子を使用し、胃壁に噛み付いているアニサキスを剥がします(以外にも分断されずに綺麗に取れることがほとんどです)。時々1匹だけでなく、10匹以上のアニサキスが胃内の至る所で胃壁に噛み付いていることがありますので1匹見つけても油断できません(取り除くのが大変です)。
アニサキス抗体
血液検査でアニサキスに対する抗体を確認します。胃アニサキス症では経過が急激であり、抗体の検出は意味がありませんが、小腸アニサキス症などの経過が少し長い場面や、魚介類のアレルギーだと思っていたら実はアニサキスのアレルギーだったなどの局面で測定されます。
胃アニサキス症の治療方法
アニサキス症の症状は噛み付いた刺激ではなく、アレルギー反応であると言われております。基本的にアニサキスの虫体を内視鏡で除去できたら疼痛はスッと改善します。またアレルギー反応による症状であるため抗ヒスタミン薬やステロイドも使用されることがあります。最近では正露丸もアニサキスの症状緩和に有効なのではと期待されております。
胃アニサキス症を防ぐには
アニサキス症を防ぐことで最も大切なことはアニサキスを体内に入れないことです。または入れてしまっても死滅していれば大丈夫です。アニサキスを体内に入れない方法としては、しっかり生魚を目視で確認し、動いている虫体を発見することです。また鮮度が高いうちに内臓を取り除き、内臓を食べないことも有効な手段です。アニサキスを死滅されるには冷凍(-20℃で24時間以上冷凍)または加熱 (70℃以上、または60℃なら1分)が有効です。海外では魚は冷凍して運搬されるため基本的にアニサキスを見る機会は消化器内科医でもほとんどありません。日本は魚を運搬するコールドチェーンが発達しているため、全国でアニサキス症が発症する環境が整っています。皆さんも生魚を食べるときはよく見てください(胃アニサキス症経験者は語る)。
参考文献
(1) Groudan K, Martins T, Schmelkin IJ. Gastric Anisakiasis Masquerading as Gastroesophageal Reflux Disease. Case Reports in Gastrointestinal Medicine. 2023;2023:8635340.
(2) 厚生労働省アニサキスによる食中毒を予防しましょう [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html]