胃潰瘍・十二指腸潰瘍

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胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは?

一般的にはストレスが原因でできる病気として知られている胃潰瘍ですが、その背景にはストレス以外の要因も影響します。特にヘリコバクター・ピロリ菌との関連は重要なトピックとなっています。胃潰瘍はリスクを理解することで防ぐことができるため、積極的に胃内視鏡検査(胃カメラ)での慢性胃炎(萎縮性胃炎)、ピロリ菌の診断が大切です。

潰瘍の定義は” 粘膜が粘膜筋板を超えて、粘膜下層より深部に組織欠損した状態”を言います。つまり粘膜が掘られ欠損した状態のことです。胃にできる潰瘍が胃潰瘍、十二指腸にできる潰瘍が十二指腸潰瘍です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因とは?

“No acid, No ulcer” “胃酸が寄与しない胃潰瘍はない”
胃潰瘍の原因は胃酸の影響であると言われています。胃酸と胃粘膜の防御力のバランスが保たれている状況が正常な環境ですが、そのバランスが崩れた時に胃潰瘍や十二指腸潰瘍が起こります。その均衡を崩す要因がいくつか存在します。

胃潰瘍の原因として心理的要因(ストレス)が有名ですが、実は胃潰瘍と心理的要因の因果関係は明らかになっておりません。明確な要因としてはヘリコバクター・ピロリ菌の感染と鎮痛剤(NSAIDs)の使用です。

ヘリコバクター・ピロリ菌

ピロリ菌は自らアンモニアを産生し胃酸環境でも生息できるようになっています。そしてピロリ菌は胃の上皮を薄くしたり、剥がしたりする作用を持ち、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となっています。またピロリ菌による胃潰瘍や十二指腸潰瘍は一旦胃酸分泌抑制薬で潰瘍が治癒しても、容易に再発することが知られています。そのためピロリ菌が原因である胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんは早期にピロリ菌の除菌治療をすることが推奨されています。また、ピロリ菌は胃がんの危険因子でもあるため、定期的な胃内視鏡検査が必要です。

ピロリ菌についてはこちら

鎮痛剤(NSAIDs)

鎮痛薬として使われる非ステロイド系消炎鎮痛薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs;NSAIDs)は、骨関節疾患の治療や脳梗塞、心筋梗塞の予防と治療に広く使用されています。このNSAIDsが胃潰瘍を起こすメカニズムはプロスタグランジン(PG)という物質と関係します。胃粘膜では粘液産生、重炭酸分泌、微小循環などを促進することにより、胃粘膜を保護するプロスタグランジン(PG)が生成されます。NSAIDsはこのPGの合成を抑制し、胃粘膜防御機構(さまざまな内的・外的刺激から胃粘膜を守る働き)を破綻させて胃粘膜傷害を引き起こします。またNSAIDs自体に胃粘膜を障害させる作用があります。そのためこのNSAIDs関連の薬剤を内服する際には胃薬と同時に内服することが望まれます。

※NSAIDs関連薬:アセチルサリチル酸(販売名 アスピリン、バファリンなど)、イブプロフェン(販売名 ブルフェン)、ロキソプロフェン(販売名 ロキソニン)、ジクロフェナク(販売名 ボルタレン)などがあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の危険因子は?

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染やNSAIDsの使用だけで胃潰瘍・十二指腸潰瘍が形成される訳ではなく、その他にも危険因子が存在すると言われております。

  • 喫煙
  • アルコール(特に度数の高いお酒)

これらは明らかな危険因子であると言われています。

ストレスは胃潰瘍との関連があると言われておりますが、はっきりと因果関係が証明されてはいません。いくつかの研究では心理的要因と潰瘍の関係が報告されておりますが、心理的要因が要因なのか結果なのかははっきりしていません。しかし、心理的要因はある程度潰瘍の発症に関係があるのではと思われます。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状は?

①心窩部痛(みぞおちの痛み)

上腹部の痛みは典型的な胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状です。内視鏡で胃潰瘍と診断された約80%の患者さんにこの上腹部痛があったと言われています。痛みが背部に放散することはありますが、背部痛がメインになることは一般的ではありません。典型的な十二指腸潰瘍の疼痛は食後2-5時間後の空腹時の疼痛であることが特徴です。また激しい上腹部痛を伴う場合は胃潰瘍が穿孔し、胃に穴が空いて腹膜炎の状態になっている可能性があります。

②食欲不振、体重減少

胃潰瘍の間接的な症状としては胃の満腹感や吐気、早期の満腹感などがあります。胃潰瘍により胃が変形したり、胃の壁運動が弱くなり胃の中に食べ物が貯留する時間が長くなるためだと考えられています。

③吐血

食道、胃や十二指腸から出血することを上部消化管出血と呼びます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は上部消化管出血の主要な原因の一つです。基本的に急性の出血であり、いわゆる赤い血を吐くことが特徴です。吐血を伴う胃潰瘍・十二指腸潰瘍は命に関わる疾患であるため緊急での胃内視鏡検査が必要となります。

④下血(黒色の便:タール便)

吐血をきたすまで重症ではないが、ゆっくりと出血が継続すると便が黒くなってきます。これをタール便と呼びます。コールタール(石炭を高温乾留する際に生成される油状物質)に類似しているドロッとした真っ黒な便で独特な血生臭い匂いが特徴です。その場合も至急胃内視鏡検査を受けて頂きます。

⑤その他関連症状

特に十二指腸潰瘍では潰瘍により内腔が狭くなり、閉塞症状をきたすことがあります。胃潰瘍の場合も胃の出口付近にできた潰瘍は胃の流出路障害をきたすことがあります。特に潰瘍が改善過程で瘢痕化する際に顕在化することがあります。まずは胃内視鏡で診断することになります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療は?

STEP 1 潰瘍を治癒させる

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療の大原則は胃酸の分泌を抑制することです。プロトンポンプ阻害剤(PPI:ネキシウム、タケプロン)やカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB:タケキャブ)などの胃酸分泌抑制剤を使用します。通常胃潰瘍や十二指腸潰瘍のサイズによりますが、胃潰瘍で8週間、十二指腸潰瘍で6週間治療が必要です。

STEP 2 潰瘍の原因を除去する

ピロリ菌の感染が明らかになった場合は除菌治療を行います。そして鎮痛剤NSAIDsの使用を控えることが必要です。鎮痛剤NSAIDsの使用が必須の方は併用薬として胃酸分泌抑制薬か胃粘膜保護薬を内服することが勧められます。また暴飲暴食やアルコール、喫煙は可能な限り控えて、ストレスを減らした生活を心がける必要があります。

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