大腸ポリープ

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大腸ポリープとは

ポリープとは突起を意味し、大腸ポリープは周囲の大腸粘膜よりも内腔に突起した構造物を指します。大腸ポリープは原則的に無症状ですが、サイズが大きくなることで腸閉塞を引き起こしたり、潰瘍を伴い出血を来したりすることがあります。そして大腸ポリープで一番重要な点は、腺腫性ポリープは大腸がんになるリスクを伴っているとされています。そのため大腸ポリープは見つかった段階でしっかり切除しておくことが大切です。

大腸ポリープの種類

大腸ポリープは大きく分けて2つの種類あり、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられます。腫瘍性ポリープとは大腸がんへ進展する可能性がある腺腫性ポリープ、または大腸がんが含まれるポリープのことをいいます。非腫瘍性ポリープは炎症などの影響で粘膜が隆起するタイプのポリープで原則的に大腸がんに進化することはありません。しかしサイズによっては出血などの原因になり切除が必要な場合があります。

腫瘍性ポリープ

腺腫性ポリープ

組織学的に腺腫を主とするポリープを腺腫性ポリープ、または腫瘍性ポリープと呼びます。大腸がんは腺腫性ポリープから進化することが多く、腺腫の組織の中に部分的にがん組織を含むポリープもこの範疇に入ります。大腸ポリープの60-70%はこの腺腫性ポリープと言われており、また腺腫性ポリープが一つでも見つかった方の内、30-50%には別の腺腫が合併していると言われております。
この腺腫性ポリープはサイズによりがんを含む割合が異なりますが、基本的にがんへの進展を予防する目的で切除の対象になっています。

無茎性鋸歯状腺腫

無茎性鋸歯状腺腫(Sessile Serrated Adenoma/ Polyps(SSA/P))は特に右側の大腸で発見される大腸がんの発生と関連があることが知られています。その表面が鋸歯状になっていることが特徴であり、外観上はしばしば平坦で表面が滑らかです。その形態から時に発見が難しいポリープの一つと言われています。その発がん経路はSerrated pathway(鋸歯状病変からの発がん経路)と言われています。

非腫瘍性

炎症性ポリープ

大腸粘膜の腺管・上皮の過形成からなる隆起です。直腸からS状結腸にみられることが多く、多発する傾向があります。サイズが小さいものは、切除は不要です。

過誤腫性ポリープ (Hamartomatous polyp)

過誤腫性ポリープにはいくつかのタイプが存在し、若年性ポリープ (Juvenile polyp)、Peutz-Jeghers 型ポリープ、Cronkhite-Canada症候群のポリープなどに分類されます。この中で特に若年性ポリープは頻度が多いと言われております。幼少期に発見されることが多いため若年性ポリープと命名されておりますが、1/3は成人期に発見されると言われております。形状は松茸などのように茎がある(有茎性)のポリープになり、出血の原因になることがあります。直腸からS状結腸に好発します。

大腸ポリープのサイズによる担がん率の違い

腺腫性ポリープにおいては、ポリープのサイズががんの組織を含むかどうかに大きく関係します。ポリープのサイズが大きくなるにつれて、がん組織を含む割合が上昇します(1-3)。大きくサイズに分けての担がん率は以下と言われています。

5mm以下 0.23-0.46 %
6-10 mm 3.1-3.3 %
10mm 以上 28.2-31.3 %

このデータは多くの報告がありますが、報告される数値には大きな幅があります。これは日本では日本の病理医はより早期の粘膜表面のみのがんである粘膜内がんを積極的に診断しますが、欧米の病理医はより深い進行したがん組織を大腸がんと診断するためです。日本での早期大腸がん(粘膜内がん)は欧米ではHigh Grade Dysplasia(高度異型)と一部が呼ばれます。カナダで勤務時もより欧米に近い考え方で治療・診断が行われておりました。しかし、サイズが大きくなるにつれて担がん率が上昇することは多くの文献で一致しています。

大腸ポリープの危険因子と抑制因子は?

大腸ポリープの危険因子は大腸がんの危険因子とほぼ同じです。危険因子としてほぼ間違いないと言われている因子が年齢と大腸がんの家族歴です。また食生活や生活習慣も大きく関係し、肥満、赤身肉や加工肉の摂取、アルコールの大量摂取、喫煙などが報告されています。
一方大腸がんを抑制する因子としては、適度な運動や、食物繊維、野菜、果物の摂取が報告されています。

大腸ポリープが関係する発癌経路

大腸ポリープ(腺腫)→大腸がん経路

Adenoma-carcinoma sequenceという有名な仮説があります。大腸がんの全てではないですが、多くの大腸がんは大腸ポリープ(腺腫)が進化したものと考えられています。つまり、正常な大腸粘膜から低異型度の腺腫が発生し、遺伝子変異が関与することで高度異型の腺腫に進化します。さらに他の遺伝子変異があれば大腸がんに進化する可能性が有力な説です。大腸ポリープを切除する意義もこの発がん経路を遮断するために、小さいポリープの段階で切除をしています。

Serrated pathway(鋸歯状病変→大腸がん経路)

このタイプの大腸がんは右半結腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)に多いと言われています。平坦な鋸歯状腺腫 Sessile Serrated Adenoma/ Polyps(SSA/P)と呼ばれる過形成ポリープの成分が含まれるポリープから、遺伝子変異(MSI-H)を伴い大腸がんに進化すると言われています。そのため従来はがん化しないと言われていた過形成ポリープでも、右側の大腸にある大きなポリープは積極的な切除が必要であると考えられています。

大腸ポリープは全て切除する必要があるのか?

大腸ポリープ(腺腫)と無茎性鋸歯状腺腫(Sessile Serrated Adenoma/ Polyps(SSA/P))は大腸がんに進化する可能性があり、積極的に切除することが望まれます。一方、日本消化器病学会が発表している大腸ポリープ診療ガイドライン2020では、「大腸内視鏡検査で発見された径6mm以上の病変は切除対象で、径5mm以下の病変でも平坦陥凹型腺腫および癌との鑑別が困難な病変は切除することを提案する。径5mm以下の隆起性の微小腺腫は経過観察も容認する」と記載されています(4)。大きさが5mm以下で腺腫と断言できるポリープは経過観察でも良いと記載されています。しかし、小さいポリープでも大腸がんと鑑別が難しいものもあります。また、実際数ミリの小さいポリープの経過観察を受けるために定期的に大腸内視鏡を受けることは時間的、身体的な負担も大きくなります。経過観察が必要であっても通院を辞めてしまう患者さんも一定数います。負担を減らすためにも切除可能なポリープは切除ができるタイミングで切除した方がいいと考えます。さらに現在は小さいポリープは高周波電流を使用せずにポリープを切除するコールドポリペクトミーという方法で合併症頻度が少なく切除が可能です。基本的には大腸ポリープで腺腫が疑われるポリープはたとえ小さくても切除することが望ましいと考えます。

参考文献

  • (1) Sakamoto Tet al. Clinicopathological features of colorectal polyps: evaluation of the ‘predict resect, and discard’ strategies. Colorectal Dis 2013 ; 15 :e295 – e300.
  • (2) 松田尚久 ら. 佐野寧,藤井隆広,他.微小腫瘍性病変の臨床病理学的特徴Japan Polyp Study 1次 TCS の結果から• INTESTINE 2014 ;18 : 207 – 214.
  • (3) Kudo S, Kashida H, Nakajima T, et al. Endoscopic diagnosis and treatment of early colorectal cancer. World J Surg 1997;21: 694‐701.
  • (4) 日本消化器病学会(編):大腸ポリープ診療ガイドライン2020 改訂第2版,南江堂,東京,2020

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