舌下免疫療法
Scroll花粉症(スギ花粉)に対する舌下免疫療法について
意図的にスギやダニから抽出したエキスを、ごく少量ずつ体内に入れることで慣らし、アレルギー症状を緩和していく方法です。舌下免疫療法以前にあった内服薬などを用いた治療は、症状を軽減することを目的としていますが、舌下免疫療法は根本的に体質を改善して花粉症などに対策する治療方法です。
現段階ではスギ花粉症に適応するシダキュアと、ダニアレルギー用のミティキュアを使った減感作療法(アレルゲン免疫療法)が保険適用で利用できます。
3~5年程度の継続治療で、8割程度の人が状態改善し、2割程度の人は完治すると報告されています。
こんな方におすすめです
- 眠気など内服薬の
副作用がひどい方 - 屋外での活動が多く、
症状が起こりやすい方 - なるべく眠くなるような薬を
使いたくない方 - アレルギー性鼻炎による
症状を完全に治したい方 - ドライバーなど、
内服できる治療薬が
制限される職種の方 - 妊娠した際に内服薬が
使えない事を不安に感じる方
舌下免疫療法の対象の方
- 対象年齢は18歳~65歳(当クリニックは成人を対象にしております)
※治療の危険性や緊急時の対応などを十分に理解していただくこと、錠剤を1分間口の中に保持できることが必要になります。 - アレルギー検査(血液検査)にてスギ花粉または、ダニアレルギー性鼻炎の確定診断された患者様
舌下免疫療法の対象外の方
- 重症気管支喘息の方
- 妊婦の方、授乳中の方
- 重症の心疾患、肺疾患及び
高血圧症がある方 - 全身性ステロイド薬の投与を受けている方
- 抜歯や口の中に傷や炎症などがある方
治療の副作用
舌下免疫療法の副作用は軽度の症状のみの場合がほとんどです。しかし生理学的にはアレルギーの原因となっているアレルゲンを体内に取り込み、体に慣れさせる治療ですので、最も想定すべき副作用は重度のアレルギー反応であるアナフィラキシーショックです。アナフィラキシーショックは体内の循環不全が起こり、緊急な処置が必要な状態です。現在のところこれ程の重篤な副作用は報告されておりませんが、当院では緊急対応ができる体制を整え、さらに提携医療機関にも舌下免疫療法のバックアップを依頼しております。
アナフィラキシーショックの初期症状は以下の症状であり、以下の症状を発症した場合は救急車を要請してください。
- 意識混濁し、コミュニケーションがとれなくなった (意識障害)
- 脈拍が速くなる、または不規則になり意識がなくなる (循環不全)
- 血圧が低く測定できない (血圧低下)
- 呼吸ができないくらいヒューヒュー喘息様の呼吸になっている (喘息発作)
これらの重篤な症状は非常に稀ですが、少しでもアレルギー反応のリスクを減らすため、服薬前後2時間の運動や飲酒、入浴などは控えることが推奨されております。
ほとんどの副作用は軽度のものであり、以下のような症状があります。
- 口腔内症状(口の中の腫れた感じ、イガイガする感じ、口内炎)
- 喉の痛み
- 頭痛
これらの症状は治療開始初期の数ヶ月にわたり継続することがありますが、徐々に改善することが多いです。
特に初回の内服時にはどのような反応が起こっても対応できるように、院内で内服して頂き、内服後30分は院内に待機していただいております。
舌下免疫療法の治療期間
効果がでるまでに最低数ヶ月~1年程度は必要になるので、根気よく継続することが必要です。
有効率は80~90%と言われており、3年間治療を行っても効果が出ない方も10~20%ほどいらっしゃいます。まず1年間治療してみて、その効果が感じられないときには医師と相談が必要になります。
治療の流れ
STEP1 花粉症の原因の特定
舌下免疫療法はスギ花粉に対するアレルギーと診断した後に治療を開始する必要があります。当院では一度に39項目のアレルギーを測定可能なVIEW39を実施しております。VIEW39は血液検査で、「どのアレルギー物質が体に反応しているかを血液中の『IgE抗体』の量で調べる検査」です。花粉症の症状と血液検査でスギに対するIgE抗体の上昇を認めたらスギ花粉による花粉症と診断します。
STEP2 治療開始 (初日~1週間)
アレルギー反応の確認のため、初回の内服は必ずクリニック内で行う必要があります。また最初の1週間は低容量の治療薬(シダキュア2000)を内服して頂き、治療に慣れて頂きます。
STEP3 治療継続 (維持期 2週目以降)
維持量の治療薬(シダキュア5000)を内服して頂きます。毎月定期的に受診して頂き、症状の確認を行なって上で、処方を継続していきます。治療期間は3~5年です。
舌下免疫療法の
メリット・デメリット
-
Meritメリット
- 自宅で服用が可能(初回のみ院内にて服用)
- アレルギー体質の根本改善
- 根治すれば、今後通院の必要なし
- 健康保険診療内での治療
-
Demeritデメリット
- 月1回の通院が必要
- 根治までの治療期間が長期間(3年~5年)
- 開始時期が限定されている(スギ花粉)
- ヒノキ花粉等への効果はない
舌下免疫療法について
よくあるご質問
- Q
薬はいつ飲めば良いのですか?
-
A
錠剤を飲み込んで30分間は激しい運動やシャワーなど、血の巡りがよくなりすぎるようなことはできません。これらの予定がなければいつでも内服可能です。もし運動する予定がある場合は、夜、入浴後に内服してください。
- Q
通院の頻度はどのくらいですか?
-
A
初回の再診のみ1週間後に来院していただきます。その後は、毎月1回の通院が必要です。
- Q
スギ・ダニ以外の花粉にも有効ですか?
-
A
現在、舌下免疫療法を実施できるのはスギ・ダニアレルギーのみです。ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど、その他のアレルゲンでは効果は期待できません。
- Q
舌下免疫療法中に、アレルギーの薬は使えますか?
-
A
舌下免疫療法と抗アレルギー薬の併用は、種類を選べば問題ありません。
例えば、ステロイドを使った点鼻薬や点眼薬なら特に支障はありません。一方、プレドニンやセレスタミンなどの内服するタイプのステロイド剤は、舌下免疫療法の作用を減らす可能性があるので、併用しないよう指導しています。
また、舌下免疫療法を始めて1ヶ月くらいは口腔内の違和感などの軽い副作用が見られるので、その対策として抗アレルギー薬を処方することもあります。