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ピロリ菌は退治すべき菌なのか?

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は胃がんと関連のある菌だと前回述べました。若い人ほどピロリ菌除菌の効果は大きく、除菌治療の利益を受けることとなります。一方、高齢の方にも除菌治療が胃がんを防ぐ効果はありますが、将来的に胃がんを防ぐという除菌の趣旨に合うメリットは少ないでしょう。しかし、除菌治療は胃薬と抗生剤を1日2回1週間内服するだけですので、当クリニックでは一概に年齢を理由に除菌をしない選択肢を提示しておりません。そもそもピロリ菌は退治すべきなのでしょうか?

結論としては、ピロリ菌は退治すべき菌です。日本からの研究ではピロリ菌が感染している胃からは10年で5%が胃がんに進展することが報告されています(1,2) 。100,000人のピロリ菌保菌者がいれば10年で5,000人に胃がんが見つかることになります。また別の研究では、ピロリ菌に感染している人では,生まれてから85歳までに胃がんに罹る確率が男性で17.0%(約6人に1人),女性で7.7%(約13人に1人)に上る可能性が高いことが報告されました(3)。

ピロリ菌を除菌治療して成功した場合、どの程度胃がんの頻度を減らすことができるのでしょうか?国立がん研究センターの報告では胃がんの既往がない方がピロリ菌の除菌治療をした場合、将来の胃がんリスクは約3分の1になると言われています(4) 。また胃がんの治療をした方でもピロリ菌の除菌治療後は胃がんの再発率は半分になると言われております。

ピロリ菌除菌治療後も定期的な内視鏡(胃カメラ)は必須です。ピロリ菌が最初からいない方にはほぼ胃がんはできません。(未分化がんや印鑑細胞癌など特殊な胃がんは除きます) そのため除菌治療後に胃がんのリスクが減っても、最初からピロリ菌がいない方(未感染)と比較したら、胃がんリスクはまだまだ高いことになります。簡潔に説明すると

ピロリ菌に現在感染している>>ピロリ菌除菌治療後>>>>ピロリ菌に未感染

の順番に胃がんリスクが低くなります。ですので、ピロリ菌除菌治療後も1年に1回の胃カメラでの検診を推奨しております。

ピロリ菌は退治することが望ましい菌です。しかし、最初の一歩はピロリ菌に感染しているか調べることです。当院では血液検査でわかる胃がんリスク診断であるABC検診(自費で約4000円)が実施可能です。今まで胃カメラの経験がない方は特に調べてみる価値があると思います。

(1) Uemura N, Okamoto S, Yamamoto S, Matsumura N, Yamaguchi S, Yamakido M, et al. Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. N Engl J Med. 2001;345(11):784-9.

(2) Ishii N, Yano T, Shiratori Y, Omata F. Pitfalls of Advanced Endoscopy Technologies in Gastrointestinal Cancer Screening. Am J Gastroenterol. 2023;118(2):371-2.

(3) Kawai S, Wang C, Lin Y, Sasakabe T, Okuda M, Kikuchi S. Lifetime incidence risk for gastric cancer in the Helicobacter pylori-infected and uninfected population in Japan: A Monte Carlo simulation study. Int J Cancer. 2022;150(1):18-27.

(4) Lin Y, Kawai S, Sasakabe T, Nagata C, Naito M, Tanaka K, et al. Effects of Helicobacter pylori eradication on gastric cancer incidence in the Japanese population: a systematic evidence review. Jpn J Clin Oncol. 2021;51(7):1158-70.

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