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胃がんは減っている?

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は胃がん発生との関連性が強く、除菌することが強く勧められます。そして日本は世界的に見ても胃がんの一大発生地域となっております。しかし、患者さんが多いことで診断学や治療が日本で進化し、日本の内視鏡医療は世界トップレベルにまで発展しました。現在日本の内視鏡医療は世界から一目置かれております。日本人の診断学への情熱と手先の器用さで、日本人の内視鏡医が世界に招聘され、世界の内視鏡医を指導することが当たり前になりました。また内視鏡産業においてもオリンパスや富士フィルムで内視鏡スコープ(カメラ)の世界シェアのほとんど独占しています。内視鏡医療に関して、日本は世界トップレベルにあります。それではなぜ日本には胃がんが多いのでしょうか?それはピロリ菌感染者が多いことや塩分の摂取が多い食文化(魚、味噌汁など)など様々な背景があります。

胃がんの最新の統計によると2019年に胃がんと診断されて人は124,319人で、2020年に胃がんで亡くなった方は42,319人と報告されております(1) 。がんで亡くなった方のうち、男性では肺がんと大腸がんに次いで第3位、女性では第5位の原因となっています。一方年次推移で見てみるとどうでしょうか?下記のグラフは胃がんの罹患率を示しています。これは一定期間で10万人あたり何人が胃がんと診断されるかをグラフにしたものです(2)。 1980-90年代にかけて胃がんは断トツの患者数があり、そして死亡原因になっていました。しかし、推移をみると徐々に減ってきていることがわかります。

胃がんが減った原因として一番考えられている背景は、ピロリ菌に感染している人が減っていることです。近年は除菌治療が発展し、ピロリ菌に感染していても除菌される方が多くなってきています。また、上下水道が整備され、井戸の使用なども減ったことで、そもそもピロリ菌に最初から感染しない人が増えてきています。個人的な胃カメラをしている印象としては現在の20-30歳代の方でピロリ菌感染はかなり少ないなという印象です。現在、胃がんと診断される人は高齢の方に多く、特に70-80歳代で多くなってきています。ピロリ菌の感染者がその年代に集中してきている影響と思われます。

またカナダで内視鏡医として働いていた時は、そもそもピロリ菌に感染している人がほとんどいなかったため、現地の内視鏡医は胃カメラでほとんど胃の中を見ずに検査を終わっていました。日本の内視鏡医は約10分胃カメラをしますが、カナダでは3分もせずに終わることが多かったです。日本人内視鏡として衝撃を受けましたが、胃がんが少ないとそこまで違うのかと驚いたことを覚えています。

胃がんは少なくなっているとはいえ、日本ではまだまだ重要ながんであることは間違いありません。ピロリ菌のチェックと特にピロリ菌除菌治療後の方とピロリ菌未治療の方は定期的な胃がん検診を受けてください。

(1) https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html [2023.09.29]

(2) Katanoda K, Hori M, Saito E, Shibata A, Ito Y, Minami T, et al. Updated Trends in Cancer in Japan: Incidence in 1985-2015 and Mortality in 1958-2018-A Sign of Decrease in Cancer Incidence. J Epidemiol. 2021;31(7):426-50.

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医療法人社団あんず会 本田クリニック

副院長 本田寛和

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