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大腸がん検診②:大腸ポリープが大腸がんに進化する?

前回の記事で大腸がん検診が充実すると、大腸がんに罹患する人が減ることを説明しました。がん検診とは一般的にがんを早期発見、早期治療するために行われております。つまり、がん検診が充実し、受診者が増えるとがんが見つかる人が多くなり、がんになる人は増えていくはずです。一方大腸がんの場合は一時的に大腸がんになる人は増えますが、その後罹患率は低下してくると言われております。その理由は、がん検診で便潜血検査が陽性の場合などで大腸内視鏡を受けると、大腸がんの診断ができるだけでなく、同時に大腸ポリープを切除することができ、将来のがんの予防になるからです。(1)

大腸がんは近年増加傾向です。日本ではがん死亡原因として男性では第2位、女性では第1位であり、消化器内視鏡の専門家として非常に危機感を持っております。(2) 大腸がん原因としては喫煙飲酒などの生活習慣、食の欧米化の影響や赤肉の摂取などの要因が挙げられます。また大腸がんは遺伝性の要素も一部あり、直系の家族の大腸がんの既往も影響します。また大腸の慢性的な炎症性疾患である潰瘍性大腸炎は粘膜の長期の炎症に伴い発がんリスクが高くなると言われております。

大腸がんの発生過程で、いきなり大腸がんが出現することは少ないと言われております。ほとんどの場合が大腸がんの前がん病変である、腺腫という大腸ポリープから進化することがわかっています。また近年議論になっている、非腺腫性ポリープであるsessile serrated adenoma/polyp (SSA/P)も、大腸がんの原因になる大腸ポリープと言われております。また潰瘍性大腸炎など大腸粘膜に長期間の炎症がある場合は、大腸がんが炎症の激しい粘膜から発生し易いことがわかっております。

ポリープとは丸みを帯びた出っ張りの総称であり、大腸ポリープは大腸の内腔に突出した出っ張りになります。大腸ポリープには切除が望まれるポリープや切除が不要なポリープなどいくつか種類があります。

大腸がんの一番多い前がん病変であり、大腸内視鏡の際に切除が望まれている大腸ポリープです。腺腫は良性のポリープで、必ずしも全てが大腸がんに進化するわけではありません。しかし、現在の技術ではどの腺腫が大腸がんになるか同定することは不可能であるため、原則すべての腺腫が切除の対象となります。一部では5mm以下の腺腫は切除しなくてもいい、という考えもありますが、欧米ではクリーンコロン(腺腫性ポリープのない大腸)を目指す考えが一般的です。当クリニックでは原則腺腫が疑われる大腸ポリープは切除しております。

肛門の近くの直腸からS状結腸にかけてよく観察される白色の小ポリープです。大腸がんとは関係のないポリープですが、中には腺腫との鑑別が難しいものもあります。その際には切除して、顕微鏡検査(病理)で調べることになります。しかし、原則として切除は不要な良性な大腸ポリープです。

腺腫だけが大腸がんの原因と考えられていました。しかし、特に右側の大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)に見られる過形成ポリープの中には大腸がんの原因となるポリープもあるとされ、それがSSA/Pと言われております。SSA/Pは内視鏡では発見が難しい色調のポリープであり、見つかった場合は原則切除が望まれます。

その名前の通り、側方に発育する腫瘍で、一般的に平坦なポリープです。組織学的には腺腫が中心ですが、一部の隆起が目立つポリープや表面構造の不整のあるポリープでは癌組織が混在している可能性があります。サイズが大きいポリープも多いため、切除が強く推奨されます。特に一括で切除を完了させることが望ましいとされています。

大腸がん検診は大腸がん死亡を減らすことができる重要ながん検診です。是非みなさん40歳以上の方は便潜血検査を受けてください。そして直系の家族に大腸がんの既往がある場合は、自費診療になる可能性がありますが、大腸内視鏡を一度は受けた方がいいでしょう。さらに自覚症状で血便や便秘、便の形態異常(便が細くなる)などがある場合は、迷わず大腸内視鏡を受けてください。1回の内視鏡が診断のみならず、将来の予防にも繋がります。わからないことがあればなんでもご相談ください。

1. Mandel JS, Bond JH, Church TR, et al. Reducing mortality from colorectal cancer by screening for fecal occult blood. Minnesota Colon Cancer Control Study. N Engl J Med 1993;328:1365-71.

2. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html [2023.11.28]

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医療法人社団あんず会 本田クリニック

副院長 本田寛和

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