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便潜血検査が陽性だけど、大腸カメラを受けないリスクは?①

便潜血検査は大腸がん検診で非常に重要な検査であることは今までも何度も述べてきました。また便潜血検査は2段階の検査であり、陽性であった場合はその後の精密検査の大腸内視鏡(大腸カメラ)を含めてが大腸がん検診です。日本ではそもそも便潜血検査を受けている割合が世界的にも低い状況です。またそれと同じくらい問題になっているのが、便潜血検査で陽性であった受診者がその後大腸内視鏡を受けるまで完遂する割合が70%と十分な高さではないことです。厚生労働省は精密検査の受診率を90%まで上げるように啓発活動をしています。ではなぜ便潜血検査が陽性の場合、精密検査がそこまで重要なのでしょうか?精密検査を受けないリスクはどれくらいなのでしょうか?興味深い2つの研究を見てみましょう。(今回は1つ目の研究を紹介します。残りは次号で紹介します。)

Zorzi M et al. Non-compliance with colonoscopy after a positive faecal immunochemical test doubles the risk of dying from colorectal cancer. Gut 2022;71:561-567.

この研究はコホート研究と呼ばれる研究です。コホートとは古代ローマの軍隊の数百人程度の兵員単位を表します。研究でのコホートは追跡される集団のことです。今回は約10万人を2つのグループ(コホート)に分けて、追跡した大規模な研究です。50~69歳の10万人が対象者であり、これは日本の小~中規模の都道府県に匹敵する研究規模です。

-便潜血検査が陽性の人に大腸内視鏡をすると大腸がん、大腸腺腫(高度異形)の有病割合が大きい

-便潜血検査陽性者の大腸内視鏡までの完遂率は十分な高さでない

-便潜血検査で大腸内視鏡を受けた人と受けなかった人を比較した場合、受けなかった人の大腸がんによる10年間累積死亡リスクは約2倍である。(adjusted HR、2.03;95%CI、1.68~2.44)。

この研究は便潜血陽性であれば大腸内視鏡が無料で受けることができるプログラムがあるイタリアのベネト州で実施されました。研究の対象者は50~69歳の住人で2年毎に便潜血検査を受けるように招待されました。その中でこの住人は2つのグループに分けられました。

  • 便潜血検査が陽性で12ヶ月以内に大腸内視鏡を受けたグループ (88,013人)
  • 便潜血検査が陽性であったが大腸内視鏡を受けなかったグループ (23,410人)

評価項目は大腸がんの発生(診断)と大腸がんによる死亡です。生存時間解析で10年間の累積罹患率と累積死亡率を比較しています。

まずは大腸がん罹患率を見てみましょう。最初の数年は大腸内視鏡を受けたグループで大腸がんに罹患する人は多いですが、5年を過ぎると大腸内視鏡を受けなかったグループが一転して多くなります。これは便潜血陽性で内視鏡をしているため、最初は大腸内視鏡を受けたグループに大腸がんの診断が多くなります。しかし、その際将来の大腸がんの原因となる大腸ポリープも切除され、時間が経過すると大腸がんと診断される人が少なくなるためだと考えられます。

次に大腸がん死亡率を見てみましょう。これは綺麗に差が出ていますが、大腸内視鏡を受けないと大腸がん死亡リスクが約2倍となる結果です。大腸内視鏡を受けることで大腸がんが治療可能なステージで見つかるため、死亡率が抑制されることが背景にあると考えられます。

便潜血陽性で大腸内視鏡を受けなかったら、大腸がんの死亡リスクは10年で約2倍です。ただし、便潜血が陽性でも、最近大腸内視鏡検査を受けたことがある、または大腸ポリープ切除後の経過観察中であるなどの背景があれば一概に判断できるものではありません。もし陽性で不安があり大腸内視鏡を受けるか悩んでいる方はぜひ一度消化器内視鏡専門医にご相談ください。

Zorzi M et al. Non-compliance with colonoscopy after a positive faecal immunochemical test doubles the risk of dying from colorectal cancer. Gut 2022;71:561-567.

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