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小児で多い異物誤飲、LEGOを使って排泄までの時間を調べたら…

救急の現場で消化器内科のオンコール医師に電話がよくかかってきます。消化管出血や胆管炎で緊急内視鏡処置が必要なケースが多く、眠れない夜の原因となっていました。その中でも異物誤飲は緊急内視鏡の適応になることがある病態です。小児の場合はコイン(硬貨)や小さいおもちゃが多く、成人(特に高齢者)は薬剤包装(PTP)の誤飲が多くあります。緊急の内視鏡の適応になる異物としてはボタン電池が有名であり、小児が誤って摂取すると腸管穿孔(腸に穴があく)の原因になるため、可及的速やかに内視鏡での除去が必要です。薬剤包装であるPTPや歯科の詰物は鋭利であり、こちらも除去が必要です。北米の内視鏡診療で多かった症例は、異物ではないですが、ステーキ肉が食道(胃の手前)で突っかかるステーキハウス症候群です。緊急の内視鏡でステーキ肉を除去することが多かったです。

緊急で内視鏡による除去術の適応になる場合がある一方、鋭利でない小さい物体などは自然に排便されるまで経過観察をすることも多いです。今回取り上げる論文はLEGOを成人が飲み込んで、どれくらいの時間で排便されるかを検討したオーストラリアからの報告です。

Tagg A, Roland D, Leo GS, Knight K, Goldstein H, Davis T. Everything is awesome: Don’t forget the Lego. J Paediatr Child Health. 2019;55(8):921-3.

この報告は疫学研究で何かと何かを比較した研究ではなく、参加者を募り実施した研究であり、ケースシリーズのスタイルの報告です。

-子供は頻繁に異物を摂取する。

-親は異物摂取からの通過時間や摂取による合併症を心配する。

-今回の研究で使用されたLEGOの頭部は成人患者を1-3日の時間(平均1.72日)で通過する。

-今回の研究で使用したLEGOの頭部を摂取することでの合併症は見られなかった。

-便の中から異物を探すことは困難であるため、保護者には探さないように助言すべきである。

この研究に参加したのは小児科の病院に勤務する医療従事者で6人が参加しました。消化管の手術の既往がある人や異物が飲み込めない人は研究から除外されています。参加者は3日間の便の日誌をつけて記録して研究に参加しています。飲み込むおもちゃは標準的なLEGOの人の頭部部分です。腸管運動の日内変動を最小限にするため、おもちゃを飲み込むタイミングは7~9時の時間帯に設定されました。調査期間中に夜勤の参加はいませんでした。

参加した6人は男女3人ずつで同数であり、年齢は27歳から45歳で平均年齢は36.2歳でした。結果的に6人中5人が便中からLEGOの頭部部分のおもちゃを発見できました。発見できなかった1人も2週間便を探し続けましたが、発見できませんでした。

LEGOを発見するために検索した便の回数は1~3回で、平均は2回でした。女性の方が異物の通過が早く、LEGOを発見できた男性2人は3日目の排便で回収しました。平均の回収時間は1.71日でした。

-LEGOの頭部のおもちゃは成人被験者では平均1~3日で排泄され、合併症は起こさなかった。

-小児の場合では所要時間は不明だが、未成熟で短い腸であり、通過時間は早くなる可能性がある。

-女性の方が早く便の中から異物を見つけることができたが、この理由を検索できるほどの症例数がない。

-LEGOのおもちゃ(丸い頭部)を飲み込んでも合併症は起きない

-排便までの平均所要時間は1.72日で1~3日である。

上記がメインのメッセージですが、この研究では博士号を持った臨床医が適切に自分の便から異物を見つけることができないのに素人である親に見つけることを期待すべきでないとしております。みなさんも異物を飲み込んでも排泄されたか一生懸命探さないほうがいいかもしれません。

Tagg A, Roland D, Leo GS, Knight K, Goldstein H, Davis T. Everything is awesome: Don’t forget the Lego. J Paediatr Child Health. 2019;55(8):921-3.

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