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大腸がん検診は結局受けた方がいいの?

日本では大腸がんは年々罹患率(診断される人)と死亡率が上昇傾向であり、消化器内科医としてはなんとかしたいという思いがあります。そのためには皆さんに内視鏡を受けて頂くため、検査のハードルを下げていきたいと思っています。しかし魚のいない所で釣りをしても魚が釣れないように、大腸がん検診もしっかりと対象を考えて実施する必要があります。現在大腸がん検診は東広島市ではすこやか検診として40歳以上に実施されています。特に検診を受けて欲しい方々は60歳代以上の方です。最近の報告も踏まえて考えてみたいと思います。

無作為に大腸がん検診を受けるor受けないに振り分けたランダム化比較試験において、便潜血検査を使用した大腸がん検診を毎年行うことで、大腸がん死亡率と罹患率が減少することが多くの研究で報告されています(1,2)。事実、アメリカでは大腸がん検診に大腸内視鏡を導入し、その検診実施率は60%を超えており、大腸がん死亡率のみならず、大腸がん罹患率まで顕著に低下傾向です(3)。

一方過去の研究を統合して研究するシステマティックレビューによると大腸がん検診は大腸がん死亡率と罹患率は減少させるが、全死亡率(全ての原因での死亡率)は低下しないと報告しました(4)。その研究を根拠にBritish Medical Journal (BMJ)のガイドラインでは15年以内の罹患率(これから15年以内に大腸がんと診断される確率)が3%以内の集団(住民や職場検診対象者)でないと”弱く反対”すると発表しております(5)。一方3%を超える場合は”弱く推奨”としました。

Helsingen LM, et al. Colorectal cancer screening with faecal immunochemical testing, sigmoidoscopy or colonoscopy: a clinical practice guideline. BMJ (Clinical researched). 2019;367:l5515. より引用

日本のがんの統計では2019年に大腸がんと診断された人は155,625例(男性87,872例、女性67,753例)、2020年の大腸がん死亡数は51,788人(男性27,718人、女性24,070人)です(6)。年齢別での罹患率(10万人あたりの診断数/年)は50歳で34.3人/10万人、65歳で123人/10万人、85歳で205人/10万人(0.20%)です。男女別では男性が50歳で38.4人/10万人、65歳で164人/10万人、85歳で256人/10万人(0.25%)、女性が50歳で30.1人/10万人、65歳で84人/10万人、85歳で177人/10万人(0.17%)でした。85歳では1000人に2-3人が年間大腸がんと診断されております。さらに15年以内の罹患率を考えるとおおよそ70歳で3%、男性では65歳、女性では80歳で3%を超えてきます。つまり65歳男性は今後15年で3%の確率で大腸がんになることになります。BMJのガイドラインに準ずれば、特に65歳以上の男性を対象に大腸がん検診を行うことは推奨するということになります。以下の図は大腸がんの罹患率を年齢階級で調整した図になります。

大腸がん検診は大腸がん死亡率と大腸がん罹患率を減少させる検査ですが、全死亡率は減少させません。しかしがん検診は有効性だけでなく費用やアクセスなども踏まえて総合的に判断することが必要です。日本では大腸がん検診は便潜血検査が行われております。便潜血検査は検査も簡便で費用も安いため積極的に受けた方がいいでしょう。日本では40歳以上が基本的に検診の対象となっており、特に60歳代以上の人は大腸がんに罹患しやすい集団ですので、より積極的に受けることをお勧めします。

(1) Mandel JS, Bond JH, Church TR, et al. Reducing mortality from colorectal cancer by screening for fecal occult blood. Minnesota Colon Cancer Control Study. N Engl J Med 1993;328:1365-71.

(2) Pitkäniemi J, Seppä K, Hakama M, et al. Effectiveness of screening for colorectal cancer with a faecal occult-blood test, in Finland. BMJ Open Gastroenterol 2015;2:e000034.

(3) American Cancer Society. Colorectal cancer facts and figures 2020-2022. 2020. Accessed August 24, 2022. https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/colorectal-cancer-facts-and-figures/colorectal-cancer-facts-and-figures-2020-2022.pdf

(4) Jodal HC, Helsingen LM, Anderson JC, Lytvyn L, Vandvik PO, Emilsson L. Colorectal cancer screening with faecal testing, sigmoidoscopy or colonoscopy: a systematic review and network meta-analysis. BMJ Open. 2019;9(10):e032773.

(5) Helsingen LM, Vandvik PO, Jodal HC, Agoritsas T, Lytvyn L, Anderson JC, et al. Colorectal cancer screening with faecal immunochemical testing, sigmoidoscopy or colonoscopy: a clinical practice guideline. BMJ (Clinical research ed). 2019;367:l5515.

(6) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

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医療法人社団あんず会 本田クリニック

副院長 本田寛和

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