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アミラーゼが高いと言われました。

消化器内科の外来で時々相談される理由の一つに採血でのアミラーゼが高いことが挙げられます。アミラーゼの正常値は44~132 IU/Lです。アミラーゼは人体の酵素の一つで、主に膵臓と唾液腺で生成されます。アミラーゼの生理的な役割は消化酵素としての役割であり、具体的にはデンプン(糖質)をより小さい分子の多糖類に分解していきます。つまり唾液の成分の一つがアミラーゼになります。膵臓でもアミラーゼが生成され分泌されます。同じ膵臓で生成され分泌される酵素としてリパーゼがあります。リパーゼは脂質の消化に関与する酵素で、血中にアミラーゼより長く存在し(半減期が長い)、より膵臓に特異的な酵素です。アルコール多飲の方が腹痛で来院されアミラーゼが異常高値(>1,000 IU/L)を示せば急性膵炎と診断は容易ですが、よく悩む場面が正常上限を少し超える異常値(150-300 IU/L)です。一般的に症状が何もないアミラーゼの微上昇はマクロアミラーゼ血症など問題とならないことが多いですが、一度詳しく調べることをお勧めします。

アミラーゼの上昇が膵臓由来なのか唾液腺由来なのかを調べる検査です。膵臓由来の場合はPアミラーゼが上昇します。特に急性膵炎や慢性膵炎では上昇することが典型的ですが、稀に膵臓がんや膵嚢胞が見つかることがありますので、一度は腹部超音波などで画像精査をした方がいいでしょう。おたふくかぜなどの唾液腺の疾患の場合は唾液腺アミラーゼ(Sアミラーゼ)が上昇します。

アミラーゼのP型、S型の分画をより精度高く調べる検査になります。検査方法には、電気泳動法や免疫化学法などいろいろありますが、電気泳動法では各アイソザイムの割合を知ることができ、免疫化学法では目的の分画を蛋白として定量化することが出来ます。マクロアミラーゼ血症の場合はP型、S型と違う泳動パターンを認めます。

アミラーゼの腎臓からの排泄状況を評価する検査です。血中と尿中のアミラーゼを同時に測定し、排泄を評価します。マクロアミラーゼ血症で免疫グロブリンなどが結合し,高分子化したアミラーゼは腎臓からの排泄が滞るため、ACCRは低下し、アミラーゼが排泄されないためアミラーゼが高値になります。

腹部超音波が第一に選択され、膵臓に膵臓がんなどの器質的な疾患がないか評価を行います。また腹痛の症状が強ければCTやMRIの撮影も検討されます。症状が全くない場合であればCTやMRIまでの精査は不要と判断される場合が多いです。

アミラーゼが上昇する原因としては分泌の亢進、または排泄が低下するクリアランスの減少です。また特定できる原因がなくても上昇することがあり、基本的には測定する理由がなければ測定することは推奨されません。主な原因としては以下のようなものがあります。

唾液由来のSアミラーゼが上昇します。耳下腺炎(ムンプスなど)、唾液腺の化膿性炎症、唾石による唾液腺導管の閉塞、アミラーゼ産生腫瘍などが挙げられます。

アルコールや総胆管結石などが原因で膵臓が炎症を起こします。腹痛の影響でエビのようなポーズになってしまうことが典型的と言われています。基本的に腹痛が必発であり、また致死的疾患であるため、大量補益(点滴)などの治療が必要になるため、集中治療が対応可能な病院での入院が必要です。

アルコール多飲や急性膵炎を繰り返す場合に膵臓が慢性的に炎症を起こしてしまう慢性の膵疾患です。膵臓に膵石ができ、また慢性的な疼痛が起こります。将来的な膵臓がんの危険因子にもなります。腹痛がある慢性膵炎は代償期であり、まだ膵臓機能が残存している証でありアミラーゼも上昇しますが、膵臓が廃絶した場合は腹痛もなくなりアミラーゼも上昇しなくなることがあります。膵臓が廃絶した場合は糖尿病が必発になり、アミラーゼが分泌されず慢性的な下痢などを引き起こします。

マクロアミラーゼ血症とは、血中アミラーゼが免疫グロブリンなどと複合体を形成し大きくなったもので、サイズが大きいため腎臓を通過できず尿中に排泄されにくくなります。その結果、血中アミラーゼ値が高値となります。マクロアミラーゼ血症自体は特に治療の対象とはなりません。アミラーゼアイソザイムの測定や血中アミラーゼと尿中アミラーゼでACCRを計算することで判断されます。

原因がはっきり同定できない場合は特発性高アミラーゼ血症と判断されます。通常は正常上限の3倍以上(390 IU/L)の上昇を認め、上記の検査と画像診断を繰り返し、判断がつかない場合が該当します。また経過中に増減があり、正常値に戻る場合もあります。基本的に治療の必要性はありません。

基本的には腹痛などがあり、急性膵炎や慢性膵炎を疑う局面で測定されます。特に症状がないのであれば測定は不要です。もしわからないことがあれば消化器内科の専門医にご相談ください。

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