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最新のAI搭載の内視鏡システム:内視鏡医のホンネ

近年内視鏡システムの進化に伴い、AI(人工知能)を搭載した内視鏡システムが各社から登場し、採用している医療機関も増えてきています。AIを使用することで内視鏡で病変の検出率が向上し、治療に結びついていることが導入するきっかけとなっています。さらに診療報酬の改定に伴い、AIに対する加算も新設され、病変検出支援プログラム加算として、大腸ポリープ切除に際し60点(600円)が算定可能になりました。

富士フィルム株式会社

富士フィルム株式会社は内視鏡診断支援機能「CAD-EYE」をリリースしています。このCAD-EYEの大きな特徴は大腸カメラだけでなく、胃カメラにおいても病変検出・診断サポート機能があることです。一般的に大腸の病変の場合は病変の模様からある程度の診断をシステム化することが可能でAIも学習がしやすかったですが、より高い診断能力が要求される上部内視鏡の領域までAIの守備範囲が拡大しています。(精度には課題がありますが)

オリンパス株式会社

オリンパスの内視鏡AIシステムは「Endo-BRAIN EYE」がリリースされています。。”Endo”はEndoscopyで内視鏡を意味します。大腸カメラの際に、病変の検出をサポートし、その表面の模様のパターンから推定される組織診断を表示します。

AGA Living Clinical Practice Guideline on Computer-Aided Detection-Assisted Colonoscopy

2025年4月にアメリカ消化器病学会から内視鏡AIの面白いレビューが公開されました。

Gastroenterology. 2025 Apr;168(4):691-700. doi: 10.1053/j.gastro.2025.01.002.

ガイドラインの概要

今回のガイドラインでは内視鏡診療においてのAI使用は推奨や非推奨も表明しないとされています。その根拠は以下結果によるものです。

大腸がん発症:1万人あたり11例減少

大腸がん死亡:1万人あたり2例減少

追加のサーベイランス内視鏡検査:1万人あたり635件増加

腺腫検出率(ADR):8%増(95% CI: 6–10%)

進行腺腫/鋸歯状病変:2%増(95% CI: 0–4%)

コストと医療資源の増加負担も考慮

上記をまとめると、内視鏡AIシステムを導入したからといって、大腸がんの死亡者が有意に減るわけではありません。さらに大腸がん死亡に直結しない大腸腺腫(大腸ポリープ)を少し多く発見し、切除することで医療費の増大にも影響しているとも考えれています。これらの課題もあり、現段階では積極的に学会として推奨する根拠に乏しいとされました。

私はまだ内視鏡AIシステムを導入していませんが、いつかのタイミングでは導入したいと思っております。ただし、まずは導入コストの問題があります。一般的に導入には数百万円のコストがかかります。最近はレンタルという選択肢もありますが、大腸ポリープを切除する際に600円/人の加算で投資を回収するには経営者としては導入に躊躇する大きな要因になります。一方、「AIを導入している=最新のクリニック?」の印象を与えることはできる可能性があるので、患者さんへのアピールにはなるかもしれません。

一方、実際に使ってみると正直大腸ポリープ(腺腫)の検出率が8%も上がるかは疑問な精度ですので、今後さらに発展することを期待したいです。ある程度のAI学習が終了し、より大腸ポリープの発見に寄与できる性能になればその段階では導入を検討したいです。

新しい医療機器の導入は社会的、さらには医療機関にも大きな検討課題になります。社会的には大腸がんの死亡が減らないのに、コストだけが増えたら本末転倒な結果になります。医療機関においては導入コストの回収ができる仕組みがある程度確保されないと大きな投資には踏み切れないことも現実的にあります。今後さらにAIが発展して、より多くのメリットが享受できるようになればさらなる内視鏡AIシステムの普及が進むのではと思います。

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