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ピロリ菌の検査方法と結果の見方:陽性の場合の意味を内視鏡専門医が解説

ピロリ菌は胃がんと関係あると聞くけど調べたことがない。両親がピロリ菌に感染していたが自分も感染しているかもしれない。「胃の調子が悪い」「胃がんが心配」など、ピロリ菌は胃がんとの関係や胃の不調とも密接に関係している細菌です。しかし、実際にはどんな菌なのか、どうやって検査するのか、陽性って言われたらどうすればいいのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、ピロリ菌の基本から、代表的な検査方法、それぞれの検査結果の見方まで、わかりやすく解説します。胃の健康が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息する細菌です。強い酸性の胃の中でも生き延びることができる珍しい菌で、1983年に発見されました。ピロリ菌に感染すると、以下のような病気を引き起こすことが明らかになっています。特に慢性胃炎である萎縮性胃炎は胃がんの発生母地になり、定期的に胃がんの発生をモニターすることが推奨されています。

  • 慢性胃炎(萎縮性胃炎)
  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 胃がん
  • 胃MALTリンパ腫
  • 機能性ディスペプシア(原因不明の胃の不快感を引き起こす疾患)

ピロリ菌の除菌により、これらの病気の予防や再発防止が期待できます。

ピロリ菌の検査には「現在感染しているか」を調べる検査と、「過去に感染していたか」を調べる検査があります。主に以下の方法があり、胃カメラを使用する方法と胃カメラを使用しない方法があります。

胃カメラを使用しないピロリ菌検査法

① 尿素呼気試験(UBT)

内容:薬(尿素)を飲む前と飲んだ後に、呼気(吐く息)を集めて検査。呼気に含まれる二酸化炭素(CO2)を調べる検査
目的:現在感染しているかどうか、ピロリ菌除菌治療が成功したかどうかの判定
特徴:精度が高く、簡便で体への負担が少ない。除菌後の判定に最もよく使われます。

結果の見方

  • 陽性 → ピロリ菌が現在胃の中にいる可能性が高い。
  • 陰性 → ピロリ菌がいない、または除菌成功の可能性。

便中抗原検査

内容:便を採取して、ピロリ菌の抗原(菌の一部)を検出する検査。
目的:現在の感染の有無がわかる
特徴:家庭で採取できる。胃薬内服中の除菌判定にも使用可能される。

結果の見方

  • 陽性 → 現在ピロリ菌に感染している。
  • 陰性 → 感染していないか、除菌に成功した状態。(検体採取の精度で感染していても陰性と出ることがある)

③ 血中抗体検査

内容:血液検査をして、ピロリ菌に対する抗体(過去または現在の感染で体が作った防御物質)を調べる。
目的:感染の既往(過去の感染)や現在の感染の可能性
特徴:ABC検診など、健康診断で使われることも多い。

結果の見方

  • 陽性 → 現在もしくは過去に感染していた可能性。
  • 陰性 → 感染したことがないか、除菌後長期間経過し抗体が消失した状態。
    ※除菌後も抗体が残るため、「陽性」=「現在感染中」とは限らない点に注意。

④ 血清ペプシノゲン検査(ABC検診)

内容:胃の粘膜の萎縮の程度とピロリ菌抗体の有無を調べて、胃がんのリスクを分類。
目的:胃がんのリスク評価
特徴:「ABC分類(A〜D群)」として、健康診断でも導入。

結果の見方(ABC分類)

  • A群(抗体陰性+萎縮なし)→ リスク低
  • B群(抗体陽性+萎縮なし)→ リスク中
  • C群(抗体陽性+萎縮あり)→ リスク高
  • D群(抗体陰性+萎縮あり)→ 除菌済みか、長期間前に感染していた可能性あり

※ABC検診はあくまで胃がんリスクの分類の検査です。基本的に生涯で1回検査すれば十分です。ピロリ菌の「現在の感染」を判断するには他の検査が必要です。

胃カメラを必要とするピロリ菌検査法

⑤ 内視鏡検査+迅速ウレアーゼ試験

内容:胃カメラで胃の粘膜を観察し、組織を採って検査。ウレアーゼという酵素との反応で評価します。
目的:現在のピロリ菌の有無を調べる
特徴:陽性であった際の精度が高く、除菌治療前のピロリ菌感染の診断に用いられることが多い。

結果の見方

  • 陽性 → 組織にピロリ菌が存在
  • 陰性 → 検出されず。ただし、採取した組織にたまたまピロリ菌が含まれなかった可能性がある。(偽陰性)

⑥ 内視鏡検査+培養検査

内容:胃カメラで胃の粘膜組織を培養して感染の有無を評価する。
目的:現在の感染を評価するだけでなく、抗生剤への感受性(強さ)の判定も可能
特徴:実際に菌を培養する検査であり、陽性の際の精度が最も高い。抗生剤への感受性の評価もできるが、時間がかかることが欠点。

結果の見方

  • 陽性 → 組織にピロリ菌が確実に存在
  • 陰性 → 検出されず。ただし、たまたまピロリ菌が採取されなかった可能性もある。

⑦ 内視鏡検査+組織検査(鏡顕法)

内容:胃カメラで胃の粘膜を観察し、組織を採って病理検査として顕微鏡で評価。
目的:現在のピロリ菌の有無を調べる
特徴:陽性の際の精度は高い検査。やや病理診断医の診断力に依存する。

結果の見方

  • 陽性 → 現在組織にピロリ菌が存在する
  • 陰性 → 検出されず。ただし、検出感度は高くなく、検体にたまたまピロリ菌がいなかった可能性もある。

⑧ 内視鏡検査+核酸増幅法

内容:胃カメラで採取した胃液を拡散増幅法(PCR)で測定する方法。同時に除菌薬の一つであるクラリスマイシンに耐性があるかも判明します。
目的:現在のピロリ菌の有無を調べる
特徴:陽性の際の精度は高い検査。PPIやタケキャブなどの胃薬を内服していても測定可能。

結果の見方

  • 陽性 → 現在組織にピロリ菌が存在する。クラリスロマイシン耐性も判明する。
  • 陰性 → 検出されず。

ピロリ菌感染が確認されたら、医師と相談の上、「除菌治療」を検討します。日本の保険診療の原則として、ピロリ菌の除菌治療には胃カメラで”萎縮性胃炎”があることが必須条件になります(胃潰瘍などピロリ菌による病気の所見があれば可能)。つまり胃カメラを受けないと、保険診療でピロリ菌の除菌治療ができません。一度内視鏡専門医に相談しましょう。

また陽性の結果の解釈も注意が必要です。特に抗体検査は現在だけでなく、過去のピロリ菌感染歴にも陽性となります。専門医と相談の上、「現在」感染していることをしっかり調べることで、不要な抗生剤の投与も予防できます。ピロリ菌抗体以外の検査で陽性であった場合は、「現在」感染している可能性が高いと言えます。

除菌が成功したかどうかは、除菌終了後8週間以上経ってから「尿素呼気試験」や「便中抗原検査」で確認します。基本的に1回目の除菌治療では80%の方がピロリ菌除菌治療成功となります。もしピロリ菌除菌治療が不成功であった場合は抗生剤を変更した2次除菌になります。ここまでで95%の方が除菌治療成功します。もしさらに不成功の場合は自費治療の3次除菌を検討することになります。

ピロリ菌除菌成功後も定期的な胃カメラで胃がんの発生のモニタリングが強く推奨されます。1年に1度の胃カメラを習慣として、もし胃がんが発生しても早期発見、早期治療に繋げるようにしましょう。

ピロリ菌は、日本人の胃がんの主な原因とされており、感染の有無を早めに知ることが、病気の予防につながります。検査方法にはそれぞれ長所と短所があるため、目的や状況に応じて内視鏡専門医と相談の上で検査を進めていきましょう。

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