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大腸がんを早期に見つけるために -便潜血検査の意義とは-

日本ではがんによる死亡者数が増加傾向にあり、その中でも大腸がんは男女ともに上位に入っています。特に女性では大腸がんが死亡原因の最も多いがんであり、男性でも肺がん、胃がんに次いで高い割合を占めています(厚生労働省 2023年統計より)。しかし、大腸がんは早期に発見し、適切な治療を行えば高い確率で治癒が見込めるがんです。そのため、定期的な検診を受けることが非常に重要となります。

その中でも便潜血検査は、最も簡便で安価で受けられる検診方法として広く利用されています。本記事では、この便潜血検査の意義と限界、正しい受け方について解説します。

便潜血検査とは、便の中に血液の成分(ヘモグロビン)が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんは進行すると、がんの表面がただれたり、出血を伴うことがあります。そのため、肉眼では見えない微量の血液を検出することで、大腸がんの可能性を示唆することができるのです。

現在主流となっているのは免疫化学法便潜血検査という方法で、人のヘモグロビンに特異的に反応する抗体を使って、便中の血液を検出します。基本的には2日法で検査され2回の便採取が必要です。多くの自治体では年に1回、40歳以上を対象に無料で提供されています。

1. 早期発見につながる

大腸がんは、初期段階にはほとんど自覚症状がありません。血便や腹痛、体重減少などの症状が出る頃には進行していることが多く、治療が難しくなることもあります。しかし、便潜血検査で早期に出血を見つけることで、がんが進行する前に発見・治療が可能になります。

実際、厚生労働省のがん検診ガイドラインでは、便潜血検査によって大腸がんによる死亡率が約60%減少するとされています(国立がん研究センター、2016年)。

2. 手軽で経済的

便潜血検査は、自宅で便を採取するだけで済むため、身体的負担が非常に少ない検査です(ほぼありません)。検体は郵送または医療機関・自治体の指定場所に提出します。結果も数日~1週間程度でわかります。

また、費用も安価(自治体によっては無料)であり、費用対効果の高い検査として世界中で推奨されています。

便潜血検査は非常に有用なスクリーニング(ふるい分け)検査ですが、完全な検査ではありません。安価で簡便な反面、検査精度に限界があり解釈にも注意が必要です。

1. 陰性でも大腸がんが隠れていることがある

出血していないがんやポリープでは、便潜血が陰性となる場合があります。特に、早期のがんは出血が少ないため、検出されにくいことがあります。そのため、陰性だからといって安心せず、毎年継続して受けることが大切です。

2. 陽性でも必ずしもがんとは限らない

便潜血陽性となっても、それが必ずしもがんとは限りません。痔や炎症、良性のポリープなどでも陽性反応が出ることがあります。陽性の場合は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けて、正確な診断を行う必要があります。

  • 検査前の食事制限(肉食の制限など)は基本的に不要です(免疫化学法の場合)。
  • 生理中や痔の出血があるときは検査を避けるか、事前に相談しましょう。
  • 2日分の検体提出が推奨されている場合は、必ず2回分採取しましょう。1回のみでは精度が落ちます。
  • 陽性になったら、必ず精密検査(内視鏡)を受けましょう。

大腸がんは、日本人にとって非常に身近ながんです。しかし、早期に発見できれば、90%以上の確率で完治が見込めるとされています。その第一歩が、便潜血検査を「毎年」受けることです。

過去に便潜血が陽性になり、大腸カメラを実施したことが直近数年である場合は、その際の所見をもとに判断されます。内視鏡専門医を受診して相談しましょう。

痛みもなく、手間も少ないこの検査で、大腸がんのリスクを減らせるなら、受けない理由はありません。年に一度の小さな習慣が、あなたやご家族の命を守ることにつながるかもしれません。

  1. 厚生労働省「人口動態統計(令和5年)」
  2. 国立がん研究センター「がん情報サービス – 大腸がん」
  3. 日本消化器がん検診学会「大腸がん検診ガイドライン 2016年版」
  4. 二村昌彦 ほか「大腸がん検診の現状と課題」『日本消化器病学会雑誌』2019年
  5. WHO International Agency for Research on Cancer (IARC) “Colorectal cancer screening”, 2020

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